「ビルメンWEB」オープン記念座談会ITおよびネットメディアから展望するビルメンテナンス業界の未来 <第2回>
2021.09.30. 10:00 更新
前回に引き続き、業界関係者の皆さまにお集まりいただき開催した「業界の発展に向けて、どのようなコミュニケーションサイトが必要とされているか」をテーマに据えた座談会の様子をお届けします。各企業や組織におけるIT活用の実態と工夫しているポイントについて、さらに具体的に伺いました。
座談会にご参加いただいた皆さま
イオンディライト株式会社
千葉エリアセンター主任/土肥隆憲氏
三栄メンテナンス株式会社
代表取締役社長/萩原康宏氏
大成ビルサービス株式会社
開発営業部/大福亜里紗氏
公益社団法人 京都ビルメンテナンス協会
事務局/南部 翼氏、臼井裕美氏
公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会
事業開発部長/尾崎貴之氏
[司会]
「ビルメンWEB」編集長/内野一郎
■SNSがカギ?企業経営におけるIT活用
――企業や組織のWEBサイトのあり方について伺ってきましたが、最近では対外的な広報活動や社内コミュニケーションの場でSNSを積極的に活用する例も多く見られます。京都ビルメンテナンス協会では、オリジナルのLINEスタンプを制作するなど、SNSに力を入れていますね?
南部 はい。LINEスタンプについては、現場で役立ちそうなスタンプを作ってみたい!ということで、会員企業の方にいろいろお話を聞きながら作成しました。これをネタにして社内や現場で盛り上がっていただけたら嬉しいな、と思っています。会員の皆さまとの活動を、もっと一般の人にも気軽にアピールできないかと日々考えています。
そのため、ホームページやFacebookの更新に加え、現場に出ている方やFacebookをしていない方にも届くようにとLINE公式アカウントの登録もしました。お友達登録していただくと、講習会や動画配信のお知らせなどが届きます。会員企業の方に限らず一般の方にも興味を持ってもらえ、この協会に親しみを持ってもらえるような、役立つうえに楽しいアカウントにしたいです。
他の地区協会だと、新潟県ビルメンテナンス協会さんがTwitterを使って情報発信をされていて、あんな風にいろんな方とつながれたら理想的ですね。一気にいろいろやりすぎて手が回らなくならないよう、徐々に取り組んでいきます(笑)。
土肥 京都協会さんが活用されているSNSに象徴されるように、双方向性がインターネットの大きな特性だと思います。これは以前の『月刊ビルメン』のような紙媒体にはない強みではないでしょうか。私は、ぜひ「ビルメンWEB」には、双方向性を生かしたメディアになってほしいと期待しています。そこで例えば、「ビルメンWEB」には、現場で共通する課題や悩みに関して、ビルメンに従事する人たちが事例を紹介しあったり、意見を交換しあったりできるような場になっていただければと考えています。個人的には、現場の人材マネジメントに関して、近しい立場で働く方々が実践されていることや考え方などを聞いてみたいですね。読者どうしが意見を交わせるような仕組みを作ることで、メディアとしても現場の生の声に触れ、読者が真に求める情報発信にも繋げていけるのではないでしょうか。業界におけるコミュニケーションのハブとして「ビルメンWEB」が機能すると面白いと思います。
――それは素晴らしいですね。ああでもないこうでもないと皆で話し合うことで、面白いアイデアがきっと生まれるはずです。全国協会から一方的に情報を発信するのではなく、業界に携わる皆さんがメディアを作り上げていくという土肥さんのお考えに大賛成です。そのためにも、「ビルメンWEB」は、できるだけ垣根を作らずに、誰もが気兼ねなく参加できる場でありたいですね。まさに今現在、遠く離れた場所にいる私たちがZoomで繋がっていることもそうですが、こういう機会を今後も積極的に設けていこうと思います。
土肥 ぜひよろしくお願いします。コロナ禍がなかなか収束しない今、人が集まれないために、現場で孤立するケースもあるように思います。ネットをうまく使って、知識を深めたり、全国の仲間とつながることができるなら最高です。
尾崎 従来の『月刊ビルメン』のような紙媒体では、印刷や配本に時間がかかったり、紙幅の関係で情報を削ぎ落としたりしなければなりませんでした。もちろん、WEBになることでそうした制約が全てなくなるわけではありませんが、より自由で開かれたメディアになることは確かです。全国協会は経営者が集まってできた団体なので、これまでの情報発信はどうしても経営者向けのものが多くなりがちでした。「ビルメンWEB」では、現場の従事者も含めて、全国に110万人いるビルメンテナンスに携わる全ての人が読者対象です。そういう意味では、従来のB to Bに加えてB to Cの要素も加える必要があるでしょう。
クリーンクルーの皆さまに興味を持ってもらえるような、例えばエンタメ的な話題を取り上げたり、土肥さんのアイデアのように意見交換ができる掲示板を設けたりして、メディア全体を盛り上げていきたいです。大きな挑戦ですし、うまくいかないこともあるでしょう。ですが、失敗を恐れていては前に進んでいけません。ユーザーである皆さんにお力添えいただきながら、一歩ずつ前進していきたいと思います。
――今回オープンした「ビルメンWEB」は、『月刊ビルメン』を継承する業界メディアという役割に加えて、全国ビルメンテナンス協会のホームページを刷新した、いわば「ビルメンテナンス業界の新しい玄関口」として、会員と全国協会および地区協会をつなぐためのサイトです。本サイトを十分に活用していただくには、先ごろ既に開設されている「マイページ」への登録が必要です。いずれも、まだオープンしたばかりで機能が十分ではありませんが、皆さんはそれぞれのお立場からこの「ビルメンWEB」と「マイページ」にどんな役割や機能を期待するのか、ざっくばらんにご意見をお聞かせください。
大福 数年前に『月刊ビルメン』がリニューアル創刊して、誌面が一新しましたよね。私は、業界内に向けたクローズドなメディアから、より外部に開かれたオープンなメディアを目指すという意思を感じました。WEB化により、メディアはさらにオープンになると思います。業界に足を踏み入れようとしている求職者なども、この「ビルメンWEB」にアクセスするでしょう。そこでぜひ、業界のイメージアップにつながるような情報発信をしてほしいです。例えば、最近ではクリーンクルーの制服にデザイン性の高いスーツタイプのウェアを採用する企業も増えていますよね。そうした情報を積極的に取り上げることで、若者が業界に興味を持つひとつのきっかけになるかもしれません。こうした情報サイトの存在自体が、往々にして「古い」と見られがちなビルメン業界に新しい風を吹かせてくれることを期待しています。人手不足という大きな課題を解決するためにも、業界のイメージアップは必要だと思います。
もう一つ。現在、私どもでは外国人技能実習生の受け入れを調整中なのですが、既に技能実習生を受け入れている企業のご担当者さんに、マネジメントのポイントや工夫について話を聞いてみたいです。また、外国人技能実習生のリアルな声も知りたいので、現場で働く実習生を集めての座談会などの記事も読んでみたいです。
「マイページ」については、業務に役立つ情報をより自由にスタッフ間で共有できる仕組みを作ってほしいです。新しい清掃資機材を紹介する記事を読んだ現場の人が、総務の担当者に向けて「わが社でもこれを導入してはどう?」と提案できるだとか……。そんな機能があれば、現場や社内で話のタネにもなりそうです。
土肥 大福さんがおっしゃった資機材の最新情報に関していうと、紙媒体の記事は文字と写真などで構成されていますが、メディアがWEBに移ると動画の掲載も可能になりますね。「こう使えば汚れがこれだけ落ちます」というように、必要な情報がより具体的に把握できる。社内で導入を検討する際にも便利なのではないでしょうか。その他のインタビューや取材記事についても、場合によっては動画で見る方が理解が早くて深まるという場合もありそうです。
萩原 私が期待するのは、社内教育などに役立つコンテンツの充実化です。『月刊ビルメン』の連載記事で「BMウーマンの休憩室」という企画がありますよね。わが社では先ごろ、女性社員を対象に、管理職養成を目指す勉強会を行ったのですが、その際に記事のバックナンバーの記事をテキスト代わりに使わせてもらいました。また、新入社員やパート・アルバイト、途中入社の人向けに「ビルメンテナンスってどんな仕事なのか」を知ってもらうために1時間の特別教育を実施していて、その際にも『月刊ビルメン』の記事が重宝します。内容が現場に即しているので、分かりやすいんですよね。記事を切り分けて清掃、設備管理、警備といった業務別や、中間管理職、マネジャー、現場スタッフといった階層別にアクセスできるようにしてほしい。どこの会社でも部署異動がありますよね。営業職の人が清掃に移るとか、うっかりすると総務に移ったり。同じ会社の中でも、部署が変わると仕事の内容が分からない。先輩社員が教えるのはもちろんですが、「これを読んでおいて」と渡せるような教材があるといいなと。大変手間がかかるでしょうが、ぜひやってもらいたいですね。
萩原 先ほどご紹介いただいた京都協会さんの取り組みもとても興味深く伺いました。私の会社が加盟する県協会では、事務的な連絡はいまだにFAXで届くのですが、参加の可否を返信する欄にQRコードが記載されていて、そこからアクセスして「参加する」と回答できるような仕組みになっています。アナログとデジタルが混在しているわけです。会社によっては、FAXの方が好都合というケースもありますが、やはり、将来的にはデジタルで全てが完結できた方が便利でしょう。そういうノウハウやアイデアを「ビルメンWEB」上で情報交換できると面白いですね。
南部 各県協会や企業が発信する最新情報がキャッチできるというのは、すごく面白そうですね。私たちもさらに頑張って更新するようにします(笑)。
土肥 せっかく、今回こうして新しいメディアが生まれたのですから、もっと個人の声や思いを発信できる場が増えるとよいですね。一人ひとりの考えや思いというのは、企業からのオフィシャルな発信とはまた違った熱量があるものです。それらを集結させることで、メディアとしての強度や説得力も増すのではないでしょうか。そういったものを通じて、業界の魅力を広く知ってもらう機会を作れたら素晴らしいと思います。
尾崎 「ビルメンWEB」では、従来より多くの人が記事にアクセスできるようになるのに加えて、誰がどの記事をどの程度じっくり読んでもらえたのか、いわゆるアクセス解析が可能になります。その情報をもとに、情報発信の方向と精度をチューニングすることで、さらに価値のある情報をお届けすることが可能になります。そのためには、ユーザーである皆さまの情報を事前にご登録いただく必要があります。その機能を果たすのが「マイページ」です。
「マイページ」では登録情報を元に、一人ひとりに最適な情報をピンポイントでお届けすることを目指しています。現在既に、講習会等の申し込み手続きや、オンライン受講を「マイページ」を通じて行えます。将来、全国協会が提供する全ての資格やサービス等が、この「マイページ」上で一元的に管理できるようになる予定です。便利な新機能を随時追加していきますので、まだ登録が済んでいない方はぜひこの機会にお願いいたします。
萩原 自分が取得した資格や受講履歴などが個人の「マイページ」アカウントに紐付けられるということですよね。それは便利そうですね。実現が待ち遠しいです。
尾崎 今後も、段階的に「マイページ」の機能を拡張していきたいと考えています。「ビルメンWEB」を通じて、全国協会から会員の皆さまへ情報発信するのに加えて、「会員同士のコミュニケーションの場」を提供する施策にも積極的にチャレンジしていきたいです。繰り返しになりますが、会員の皆さまのご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
――今回の座談会では、たくさんの示唆に富むアイデアをいただきました。皆さんのご期待に添うように、新しい業界メディアである「ビルメンWEB」を発展させてまいります。本日はどうもありがとうございました。
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